式根島はこうして守られる

官民連携で大規模災害に備える

式根島は東京都新島村に属する小さな島です。そんな離島の防災体制はどうなっているのでしょうか。

去る2025年11月15日(土)に行われた南海トラフ地震に伴う大規模津波災害を想定した「東京都・新島村 総合防災訓練」「自衛隊/日米豪共同離島等統合防災訓練」では、いざという時のために、東京都と新島村、そして警視庁、海上保安庁、自衛隊、東京消防庁など、中央・地方の行政機関、民間の諸団体から総勢約1000人が一堂に会し、官民一体となった広域連携体制の徹底的な検証が行われました。

新島・式根島での大規模な訓練実施は12年ぶり。島民にとっても、こんなにたくさんの関係機関が連携して、災害時の離島の安全が守られていることを再確認するとともに、朝から鳴り響く訓練用Jアラートや村内放送に身が引き締まる一日となったのでした。

プログラム

時間訓練項目
08:30 – 09:30災害対策本部訓練
08:30 – 避難完了まで津波避難訓練
09:00 – 11:00避難所開設運営訓練(式根島小学校)
10:00 – 12:30避難所の炊出し訓練
10:10 – 11:10被害状況把握・海難救助訓練
11:00 – 14:30ライフライン応急復旧・展示体験訓練
12:30 – 13:10島外からの部隊投入訓練・救出救助訓練
12:45 – 14:30医療救護活動・後方医療ヘリ搬送訓練
13:00 – 14:30物資輸送訓練(自衛隊輸送艦・ヘリなど)
13:30 – 14:30被災住民の島外への輸送(避難)

主な訓練の内容

訓練は、南海トラフ地震の発生とそれに伴う大津波警報の発令という切迫した状況を想定して行いました。ライフラインの途絶や交通寸断、物資輸送や救難活動といった現実的な課題の対応を実践しました。

  • 島内住民の避難・救助活動: 新島村職員と住民が連携し、迅速な高台への避難と、孤立した住民の救助活動を実施。
  • 避難所開設・運営訓練:式根島小学校にて、食料や衛生管理、要配慮者への対応手順を確認。
  • 広域応援部隊の展開: 警視庁、海上保安庁、自衛隊などが航空機や船舶を用いて新島・式根島へ展開し、救助・医療支援を開始。
  • 海上からの救出・物資輸送: 海上保安庁による洋上からの救助活動や、自衛隊による救援物資の輸送、負傷者の広域搬送訓練。
  • 通信確保・情報収集: JARL(日本アマチュア無線連盟)東京都支部や無人航空機システム(UAS)を運用する団体も参加し、途絶した通信の確保や、UAS(ドローン)を活用した被災状況の情報収集訓練を実施。

広域救援の要「自衛隊」の訓練

島外からの救援・支援の中核を担ったのは自衛隊でした。陸上、海上、航空の三自衛隊が統合運用で参加し、大型装備を投入しました。

1. 来島した主な機種・艦名と活動

分類参加機種・艦名式根島周辺での主な役割
輸送艦海上自衛隊
おおすみ型輸送艦しもきた
沖合に停泊し、洋上からの活動拠点、大量の救援物資・車両の輸送
輸送ヘリ陸上自衛隊
CH-47JAチヌーク
負傷者の収容、式根島から本土への広域医療搬送訓練を実施
多用途ヘリ陸上自衛隊
UH-60J
災害情報収集、洋上救助活動

次々現れる自衛隊の軍用機や軍用艦に島民一同感激して、ついつい撮影しまくりです。

海上自衛隊は、港湾使用不可を想定した洋上からの物資リレー輸送を、陸上自衛隊は式根島内の臨時ヘリポートを利用したトリアージ(治療優先順位の決定)と広域搬送を実践。また、在日米軍や豪州軍(米軍人員約10名・航空機1機、豪州軍人員2名参加) と連携した訓練も実施され、国際的な救援協力体制の確認も行われました。

2. 地域との「ふれあい行事」

自衛隊による島民との「ふれあい行事」も実施され、音楽隊が式根島小学校で素晴らしい演奏を披露してくれました。


総合防災訓練 参加機関・団体

今回の訓練は、新島村や東京都などの自治体に加え、自衛隊、警察、消防、海上保安庁などが、それぞれの専門性を活かし、緊密に連携する体制を展開できました。島民も、大規模災害に対する備えの重要さを再確認した一日となりました。

地方公共団体新島村、東京都
警察警視庁
消防東京消防庁など消防関係者
海上警備海上保安庁
防衛自衛隊(陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊)、在日米軍、豪州軍
通信・新技術JARL東京都支部 (日本アマチュア無線連盟)、無人航空機システム関係団体(UAS-Japanなど)
医療島しょ保健所、東京都立病院機構、日本赤十字社、献血供給事業団など
住民・その他新島村住民、村内関係者、その他関係機関

式根島に来島される皆様も、式根島だけではなく、旅先の防災体制や避難経路など把握しておくことで、より安心して滞在できます。どこにいても災害時の「自分の身は自分で守る(自助)」、「地域で助け合う(共助)」、「行政や公的機関が助ける(公助)」という3つの基本的な考え方は変わりません。万が一のときは、島民も観光客も変わりなく、全員が救われるよう助け合いましょう。

最後に、この日のために、式根島に来島いただいた関係機関のみなさま、本当にありがとうございました。今度はプライベートでぜひ遊びに来てください!

参考リンク

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