式根島の「もしも」に備える必読ガイド

伊豆諸島に属する式根島は、美しい海と自然に恵まれた太平洋に浮かぶ小さな島です。
離島ですから、台風などの気象災害、そして、特に地震や津波への備えは一層、重要です。このページでは、式根島に滞在する前に、万が一の事態に備えて知っておきたい、式根島の防災に関する情報をまとめました。
式根島に起きる災害と対応
1.台風

大きな台風が来る見込みの時はなるべく来島しない
式根島は、太平洋で生まれた若くて元気な台風の通り道となることが多く、内地より強風や豪雨が強い傾向があり、屋根の損壊や建物の倒壊、インフラの破損の可能性を想定しておく必要があります。
台風は予測が可能なので、特に強い台風が襲来することが予見できる場合は「計画を変更して来島しない」が正解です。一度接近すると、海が時化て船が欠航し、島での滞在に大きな影響を及ぼします。また、場合によっては長期間、島に閉じ込められることもあります。すでに来島している場合は、予定を切り上げて船が動いているうちに島を出る人が多いです。
留まる場合は、思ったよりも影響が長引くことを念頭に余裕をもってリスケジュールしましょう。台風接近時は、屋外の活動はすべて中止し、宿や村役場からの情報(防災行政無線など)に従って安全な場所で待機してください。強風で飛来物が発生する危険があるため、不要な外出は厳禁です。非常事態中では今すぐ救助や捜索ができません。
強風・台風接近時のリスク
台風が接近すると、太平洋に浮かぶ式根島には、瞬間的に非常に強い風が吹き荒れます。風速は内地より強くなることが多いでしょう。
- 屋根・窓の破損
強風により、樹木が倒れたり、枝が折れたり、建物の屋根の一部やトタンなどの建材が吹き飛び、窓ガラスが割れる危険があります。飛来物は凶器となるため、大変危険です。 - 屋外活動の禁止
強風警報発令時や台風接近時は、絶対に外出しないでください。宿の窓から離れ、頑丈な壁の近くで待機しましょう。 - 飛来物
宿泊施設の周囲においた道具類、物干し竿、ゴミ箱などが飛散する可能性があります。宿の指示に従い、事前の片付けに協力し、安全な場所で身を守ってください。 - インフラの寸断
暴風により電柱が倒れたり、海中ケーブルや送電線、海底送水管等が切れたりすることで、停電や通信障害、断水が発生します。
参考:No.1098 台風による島間海底送水管破損事故(東京都/2004年)


台風襲来前にできること
- 充電
停電に備え、携帯電話の充電はもちろん、モバイルバッテリーも用意して充電を満タンにしておきましょう。 - 情報収集
宿のテレビやラジオ、防災行政無線など、利用可能な手段で最新の気象情報や村の指示を常に確認しましょう。 - 水・食料の確保
停電によりポンプが止まると断水することもあるため、自分でも飲料水や食料を多めに確保しておきましょう。
欠航と孤立の心構え
式根島に強い台風が来る時、以下のような事態が想定されます。心構えをしておきましょう。
- 欠航する
式根島へのアクセスは船(大型客船・ジェット船)のみです。台風が接近・通過する際は、波が高くなり、船の欠航が決定的なものとなります。欠航が数日間続き、島が一時的に孤立する可能性があります。 - 食料・物資が滞る
船が止まると、島外からの食料や生活物資の供給が途絶えます。なお、島は慣れているので、冷凍食品やレトルトが充実し、生鮮食品がなくても困らないだけの食品は確保されています。牛乳やパン、新鮮な野菜の供給は止まります。肉や魚は冷凍品があります。 - 長期滞在になる
帰りの船が欠航した場合、次の船便が出るまで島内での滞在を延長せざるを得なくなります。
来島前の対策と心がまえ
- 事前に情報を確認
接近が予想される場合は、出発前に東海汽船の運航情報を必ず確認し、無理な来島は避けてください。 - 旅程にゆとりを持っておく
帰宅日の翌日に重要な予定(仕事、学校など)がある場合は、欠航リスクを考慮し、予備日を設けるなど、ゆとりのある日程を組みましょう。
2. 地震と津波

式根島で最も重大な危機となりうるのが、南海トラフ巨大地震などに伴う津波です。
最短14分で約28mの津波を想定
東京都が公表している津波浸水想定では、最悪の場合、式根島沿岸の一部において以下の事態が予測されています。強い揺れを感じたら、考えるより早く、海岸線を離れて、島の高い場所を目指して避難を開始してください。海岸付近は大きな被害を受ける恐れがあります。
式根島は最高地点109mの平らな島ですが、海岸から集落が多い地域に上がれば、標高30m以上あり、まず大丈夫です。また河川がないので、津波が川を遡って集落を流すような事態にはなりません。
強い揺れや長い揺れを感じたら、津波警報の発令を待たずに
「すぐに、高台へ!」
これを徹底してください。
| 項目 | 予測される数値 |
| 最大津波の高さ | 約28m |
| 津波到達時間 | 最短14分 |
| 最大浸水の深さ | 約27m |

※この予測は特定の地震モデルに基づいたものであり、揺れの大きさや場所によって変動します。
※出典:国土交通省:北海道、福島県、東京都及び岐阜県における津波浸水想定の設定・変更について
3. 離島ならではの注意事項と備え
離島ならではの環境により、本土とは異なる問題が起こります。
① 想定されるライフラインの途絶と孤立について
- 電力
式根島は新島から海底ケーブルで送電を受けています。地震や津波によりケーブルが切断されると、島全体の停電が長期化する可能性があります。 - 水道
式根島は新島から海底配水管で送水を受けています。地震や津波により配水管が切断されると、島全体の断水が長期化する可能性があります。 - 通信
海底通信ケーブルの被災や停電により、携帯電話や固定電話が使用困難になる可能性があります。 - 交通・孤立
港湾施設が被災し、船の運航が停止すると、島外からの物資や支援の到着が遅れ、孤立状態が長期化する可能性があります。
【ちょっとしたことで役立つ備え】
- 携帯電話の充電をこまめに行い、モバイルバッテリーを持参する
- 懐中電灯やソーラーランタンを持っておく
- キャッシュレス決済が使えなくなることを想定して、現金も用意しておく
- 少し余分に飲料水や食料をもっておく
② 避難路と島内の道について
- 避難路について
式根島は、要所要所に高台へ続く避難路(急な階段状の小道)が用意されています。利用頻度が低く、雑草が生い茂っているなど足場の悪い場所がありますが、いざとなればあなたの命を救います。夜間は、懐中電灯やスマホで足元を照らし、落ち着いて避難してください。 - 島内の道について
島内の多くの道は道幅が狭く、古い建物や空き家が地震で倒壊し、道を塞いでしまう可能性があります。また、瓦や看板の落下にも注意してください。
【ちょっとしたことで役立つ備え】
- 島の散策などで意図的に避難路を見つけておこう
- 式根島小学校や中学校の位置を覚えておこう
③ 火山活動について
式根島は、活火山である新島の噴火想定範囲内に位置しています。新島が噴火した場合、式根島に火山灰の降灰や、風向きによっては噴石などの影響が及ぶ可能性があります。気象庁が発表する噴火警戒レベル(新島)に注意し、警戒レベルが高い場合は、来島を控えてください。
4. 災害時の島民の行動とお願い
式根島は、住民同士の結びつきが強く、助け合い、共同作業の精神が根付いています。これは災害時にも発揮され、島民は非常に迅速に行動します。
船の沖出しや、陸揚げについて
津波の危険がある場合、島民、特に漁業関係者は「船を港から沖へ出す(沖出し)」または「船を陸に揚げる(上架)」を行います。
- 沖へ出す理由
津波は湾内で波が高くなるため、沖合に出して津波の影響が少ない外洋でやり過ごす方が安全なため。 - 船を上げる理由
港に残しておくと、船自体が破損したり、津波で流されて港湾施設や他の船に衝突し、二次被害の原因となるため。
この行動は、島民の生活の基盤である船を守り、復旧を早めるためのものであり、一刻を争う作業です。
観光客の皆様へのお願い
- 島民の緊急作業を妨げない
島民が船の移動など緊急の作業をしている場合、行動を妨げないようご協力をお願いします。 - 自分の避難を最優先にし、共助に加わる
島民は、まず自分の安全確保と公的な役割(消防団、自主防災組織など)の対応に動きます。観光客の皆様は、地震を感じたら、警報や指示を待つのではなく、自らの判断で速やかに高台へ避難を開始してください。その際、島民からの指示があれば、冷静にそれに従ってください。島民は土地勘や高低感覚を持っています。また、避難経路の確認や支援が必要な方がいたら「共助」の精神で協力しましょう。
5. 緊急時の連絡先と情報収集
| 連絡先 | 電話番号 |
| 新島警察署 式根島駐在所 | 04992-7-0046 |
| 消防・救急(新島村役場が受けます) | 119 |
| 新島村役場 | 04992-5-0240 |
| 式根島観光協会 | 04992-7-0170 |
災害時の情報源
- 防災行政無線(島内に設置されたスピーカーからの放送)
- テレビ・ラジオ・インターネット
- 宿・観光施設の方々の指示
6. 主要な避難場所(津波避難目標地点)
式根島のハザードマップ Hazard map


式根島中学校(標高:約36m)
[住所]東京都新島村式根島166
式根島小学校(標高:約42m)
[住所]東京都新島村式根島311-1
式根島開発総合センター(標高:約42m)
[住所]東京都新島村式根島255-1
Yahoo!防災速報アプリについて
防災速報アプリをダウンロードしてください
新島村では、ヤフー株式会社と「災害に係る情報発信等に関する協定」を締結しています。「Yahoo!防災速報アプリ」をダウンロードしておくと、村から発信される災害情報をプッシュ通知で受け取ることができます。
海水浴・マリンアクティビティをしている時
海水浴、サーフィン、シュノーケリングなどをしている時に地震が起こった場合、「揺れを感じない」まま津波の危機にさらされる可能性があります。そのため、「津波フラッグ」で視覚的な情報伝達をしています。
【大原則】揺れを感知しなくても、以下のサインを見たら直ちに避難
海の中や水面付近では、地震の揺れを感じにくいことがあります。以下のサインを一つでも確認したら、「津波が来るかもしれない」と判断し、すぐに海から上がり、高台へ避難してください。

- 津波フラッグ
海水浴場や海岸で、監視員やライフセーバーなどによって赤と白の格子柄の旗(津波フラッグ) が振られたとき。 - 周囲の異変
近くにいる島民や他の観光客が、突然大声を出して走り出したり、高台へ向かって歩き出したりしたとき。 - 異常な潮位変化
急激に潮が引き始める(海底が見え始める)か、逆に急激に潮位が上昇し始めたとき。 - 異音
遠くから「ゴー」という低い地鳴りのような、あるいは汽笛のような異音が聞こえたとき。
1. 海水浴・シュノーケリング中の場合
地震発生時
直ちに海から上がる
揺れを感じた、または津波フラッグを確認したら、すぐに泳ぐのを止め、一目散に浜辺(陸地)へ上がってください。
津波は水深が浅い場所で急激に高くなります。海岸線にいる時間は一秒でも短くすることが重要です。
避難開始
着替えず、高台へ
荷物(タオル、貴重品など)は諦め、水着のままで構いません。最も近い津波避難目標地点(高台) へ向けて全力で走ってください。「着替えに戻る」「荷物を取りに行く」といった行動は、命に関わります。
避難完了後
津波警報解除まで待機
指定された避難場所で、防災行政無線や携帯電話で津波警報が解除されたことを確認するまで待機してください。
2. サーフィン・SUP・シーカヤック等の場合

マリンスポーツ中は、海上の異変に気づきやすい反面、避難開始が遅れると陸地に戻るのに時間がかかります。
1. 揺れや警報を感じたら、即座に海から上がる
- 地震の強い揺れを感じたら
「津波が来るかもしれない」と考え、すぐに海から上がり、避難を開始してください。サイレンや警報を待つ必要はありません。 - 津波警報・大津波警報が出たら
直ちにパドルで全力で岸に向かって戻ってください。 自治体の防災無線やサイレン、スマートフォンの緊急速報、あるいは海上に設置される津波フラッグなどの情報を確認し、迷わず行動します。サーフボードやカヤックは重要な浮力体になりますので、なるべく離さないようにしてください。 - 周囲への声かけ
「津波だ!逃げろ!」と大声で叫び、周りの人にも避難を促しましょう。
2. 高台や避難場所へ避難する
- とにかく高台へ移動する
岸に戻ったら、徒歩で道路や避難路を通って高台へ、全力で向かいます。 - 津波想定の28mより高い場所を意識する
津波は何度も繰り返し襲来し、遡上高(かけ上がる高さ)は地形によって大きく異なります。式根島の場合、最低でも海面より30m以上高い場所を目指してください。 - 車での避難は避ける
避難経路で渋滞を引き起こし、多くの人の命を危険に晒すことになります。原則として徒歩で避難してください。
3. 津波に遭遇し、流されてしまったら
- 浮力体から離れない
サーフボードやカヤックは、浮力体として使用します。 - 頭部を守る
流されてきたがれきなどから、頭部を守ってください。 - 諦めずに浮き続ける
体力を温存し、浮き身の姿勢で救助を待ちます。
【日頃からの備え】
- ハザードマップの確認
式根島の津波ハザードマップ(津波浸水想定区域と避難場所)を事前に確認し、避難経路を頭に入れておきましょう。
釣りをしている時
【大原則】揺れを感じたら即行動

強い揺れ(震度4以上が目安)や、弱くても長く続く揺れを感じた場合、また、緊急地震速報を受信した場合は、津波警報を待たずに直ちに避難行動を開始してください。
1. 桟橋・岸壁(港での釣り)の場合
港周辺は津波浸水想定区域に含まれ、津波や潮流の影響を強く受けます。
地震発生時
即座に避難開始
桟橋や岸壁から離れ、津波避難目標地点(高台) へ向けて全力で走ってください。
港湾施設(桟橋など)は津波により崩壊・流出する危険があります。釣り具は一切持ち出さず、命を最優先してください。
避難路で避難
内陸の高台を目指す
道路標識やハザードマップで確認した避難路を使い、式根島中学校・小学校などの高台の避難場所を目指します。
2. 磯釣り(地磯)の場合
地磯や海岸線の岩場で釣りをする場合も、津波到達までの時間がないため、迅速な判断が必要です。
地震発生時
一目散に陸地へ
揺れが収まるのを待たず、すぐに磯から離脱し、海岸の斜面や崖を登って内陸の高台を目指します。釣り具は一切持ち出さず、命を最優先してください。磯場は足場が悪く滑りやすいうえ、津波の遡上や引き波に巻き込まれる危険が極めて高いので一刻を争います。
避難完了後
島の指示に従う
高台へ避難完了後、防災行政無線や携帯電話などで正確な情報(津波警報の高さ、解除情報など)を確認し、むやみに海岸へ近づかないでください。
3. 渡船で行く沖磯(沖磯釣り)の場合
沖磯での釣りは、災害時において最も危険度の高い状況となります。
来島前・出発前
渡船業者との確認を徹底
地震発生時や津波警報発令時の「緊急帰港の連絡方法(携帯電話、VHF無線など)」と「帰港までの手順」を必ず確認してください。渡船業者が連絡手段や手順を確立していることが、唯一の生命線となります。
地震発生時
(1)揺れが収まり次第、船長に連絡
揺れを感じたら、まず携帯電話や確認した手段で船長へ連絡し、状況を伝えます。
(2)海面を注視
連絡が取れない場合でも、津波の第一波は14分で到達することを念頭に置き、海面の変化(急激な引き潮、潮位の上昇)を警戒します。
津波到達まで
磯の最も高い場所へ移動
船の到着を待つ間、釣り具や荷物は諦め、磯の上で最も高く、波が被りにくい場所へ移動し、岩にしがみつくなどして身の安全を確保します。非常に危険な状態であり、少しでも高い場所へ行くことが生存率を高めます。
最後に
「どこに逃げるか」「何が困るか」を事前に知っておくことが、命を守ります。豊かな自然を楽しむためにも、ぜひこの情報を活用し、安心・安全な旅をお過ごしください。
