お月見泥棒(十五夜の風習)とは

「お月見泥棒」とは、中秋の名月(旧暦8月15日の十五夜)の夜に、昔から日本各地の農村で行われていたユニークな風習です。中秋の名月は別名「芋名月」といい、収穫の祝いと感謝の儀式でもありました。

この日は、子どもたちを月の使者と見なし、各家庭に飾られたお月見のお供え物(団子やまんじゅう、芋、果物、お菓子など)を盗んで良い、というのが共通の決め事になっています。子どもが供え物を盗むことは、「お月様がお供えを受け入れてくれた」ことを意味し、縁起が良いとされました。

さて、現代。このお月見泥棒を行う地域はだいぶ減りました。今でも行っているのは、福島県や茨城県、千葉県、愛知県、三重県の一部の地域が知られています。そして、なぜか、伊豆諸島の式根島にこの文化が残っています。特別、農業が盛んな地域というわけでもないのですが、アメリカ芋の収穫祝いでしょうか。そのあたりは謎です。

式根島のお月見泥棒

各家庭の庭先に台やテーブルを出し、思い思いに飾り付けて、お菓子などを並べます。お月見らしくススキや秋の花を一緒に飾ったり、子どもたちが家々を回り、お菓子をもらうということにちなんでハロウィン風に仕上げるなど、各家庭の個性が出ます。

今回のひだぶんのお月見泥棒はアメリカ芋のパウンドケーキ

子どもたちは袋を持参して、連れ立ってあちこちの家を巡ります。この日ばかりは夜に出歩いてもいいことになっていますが、小さい子は危ないので親が車に乗せて巡回を手伝う風景も。

式根島の地域全体で、子どもたちを喜ばせ、育む温かい眼差しを向ける一方、いつまでも子どもが絶えない島であるようにと心から願う一夜になるのでした。