「節分」と言えば、豆まきや恵方巻、あるいは魔除けの「柊鰯(ひいらぎいわし)」を連想するのが一般的です。しかし、式根島にはそれら家庭行事に加え、式根島唯一の寺院「東要寺」で毎年行われる厄除けの儀式があり、毎年多くの島民が参加しています。

年4回?そもそも節分とは

まずは、基本知識のおさらいから。「節分」とは季節を分ける節目(立春・立夏・立秋・立冬の前日)を指します。なかでも、立春の前日は「一年の始まり」を控えた特別な節目とされてきました。季節の変わり目(=境界)には邪気(=鬼)が入り込みやすいと考えられており、その邪気を払い、新しい一年を清らかな心身で迎えるための儀式が、「節分行事」です。現在でも、日本各地で独自の形で受け継がれています。

かつての式根島の節分行事

式根島の開島100周年を記念して編纂された『式根島開島百年史』(1987年刊)には、非常に興味深い当時の節分行事が記録されています。

式根島の伝統的な作法

  • 家の主人や年男は風呂に入り、身を清める。
  • 竹を割って魚の骨をはさみ、火の上でかざす。
  • それにツバを三回吹きかけ、家の四つ角に立てる。
  • これは「外の餓鬼」に食わせるための供物であり、その後に豆をまく。
  • 「福は内、鬼は外」と呼びながら、三回ずつ豆をまいた。

出典:式根島開島百年を記念する会 編/出版者:新島本村/出版年月日:1987.5

単に鬼を追い出すのではなく、身を清めた上で、境界線(家の四つ角)にて「異界のモノ」をもてなし、災いを食い止める。隣島の新島村博物館で動画紹介されている新島の儀式とも異なる、式根島独自の習俗です。

現在の式根島の節分風景

現在、式根島の各家庭で行われている節分行事の多くが一般的な内容です。島内の商店では福豆や恵方巻(予約制/みやとら)を販売しています。節分の特別な風景といえば、毎年、法光山 東要寺で行われる「2月3日厄除星祭り」です。

2月3日厄除星祭り

東要寺の流派である日蓮宗は、人の運命を司るとされる「本命星(生まれた年)」や「当年星(その年の星)」を供養する「星祭り」を重視します。

式根島の星祭りでは、厳寒の夜、白褌(しろふんどし)を締めた厄年の男性と住職、白装束の女性らが水行によって身を清めます。その後、本堂にて厄除け希望者と共に読経を行い、除災得幸・福寿増長を祈願します。


水行は、ただ冷水を浴びるだけの苦行ではありません。1年間で心に溜まった「三毒(さんどく)」を削ぎ落とし、新たな年の身体健全・心願成就を祈る儀式です。

私たちが日々抱えてしまう苦しみの根源「三毒」とは、以下の三つを指します。

三毒とは

貪(とん):むさぼり
必要以上に欲しがる心、度を越した執着のこと。

瞋(じん):いかり
自分の思い通りにならないことに対する、怒りや憎しみの心。

癡(ち):おろかさ
物事の道理を知らないこと、真実を正しく見ることができない無知な状態。

心の汚れを身体に浴びせた水とともに流し、まっさらな心で立春を迎える。それが東要寺の星祭りの本質です。

まとめ

式根島における節分は、揃って、新年の息災を願う節目となっています。無事に儀式を終えたことを共に祝い、語らうひとときも、共同体の絆をつなぐ島の情景です。