
ウキフカセ特訓ポッキリ6時間
11月は2回も連休があるので、大手を振って、また式根に来れました。画伯(娘)と2人で、3泊、釣りに没頭して、前回のお口直しをする気マンマンです。さらに、今回はシーバスロッドに続いて、NEWギア「磯竿」が増えました。登山界では、やりたいことに伴って増える登山アイテムを「✕✕✕が生えた!」と自虐しますが、釣り界隈も相当ヤバそうです。
さて、式根島に到着して、チェックイン後、さっそく、桟橋へ向かいました。竿は、私が強欲フォーメーションの2本出し、画伯が手持ち1本勝負。もちろん、信頼と実績のボウズのがれ(胴突仕掛け)装着です。
風が強く、アタリが少ないものの、画伯が良型のオジサン(※注:魚)を釣り、ひとまず夕食確保して納竿。その晩は、式根島食材の「たたき」を使った簡単なたたき鍋を作り、一日目を終えました。
命あっての物種(いのちあってのものだね)
2日目は、昨日より風が強まりました。桟橋を見ると、波はかぶっていませんが、だいぶ釣り辛そうです。そういえば、島民が「島は風裏に行けば、どこかで釣れる」と教えてくれたのを思い出しました。
そこで、私一人で「風裏」になる磯を探すことにしました。普段から山歩きをしており、足元は軽登山靴ですし、GPSもあるしで、気楽です。車道から草がうるさい小道を分けて海岸に降り、目的の磯に向かってゴロタ石の海岸を歩き始めました。やがて、目的地に到達するには、足元に波が渦巻く岩の割れ目を飛び移ったり、横向きになって岩をつかんで移動する必要があることに気づきました。
私は立ち止まって考えました。クーラーボックスや竿など大量の釣り道具を持って、こんな移動ができるはずがありません。しかも、釣れたら釣れたで、帰りはさらに荷物が重くなります。そもそも、風裏とはいえ、普通にまだまだ爆風で危険です。ヤバそうな岩の上に何かが動いているのが見えましたが、おそらく蜃気楼でしょう。


潔く引き返したはいいものの、山と違って岩場は踏み跡がつかないため、どこから磯に降りたのかわからなくなってしまいました!

GPSの軌跡を頼りに、多少強引に、もと来た道に復帰できましたが、長い30分間の冒険になってしまいました。
磯は恐ろしい。自分は桟橋専門で行こう。
結局、一度宿に戻って釣り道具をもって、いつもの桟橋に腰を据えました。私が小さいアカハタやイシガキダイ、画伯がメイチダイをGETして納竿としました。

運命の出会い
さて、早くも最終日の3日目です。考えたら、持ち帰りは1日目オジサン、2日目メイチダイと割と貧果です。今日は、今までの強風が嘘のように穏やかな桟橋で、今度こそ、本命を釣るぞと気合い充分です。
…しかし、またまたウツボです。晩秋の式根にはウツボしかおらんのか。しかも、さっきからやたらと根掛かりして、高級品のボウズのがれ(市販仕掛け)がいくつあっても足りません。

私は、何度もかかるウツボを座ったまま陸(おか)に上げ、針を外すとタモの柄でこづきながら、足で蹴っ飛ばして海に返しました。その様子を見ていた釣り師三人組がおりました。しばらくすると、そのうちの一人が、こちらに歩いてきて「何を釣っているの?」と声をかけてきました。
私のタックルに視線を感じます。今回投入したメインウェポンは磯竿5号です。これを買った理由は、単純に、こないだ釣ったなかで一番おいしかった「フエダイ」の釣り方をググったら、磯竿4~5号と書いてあったからです。同じくおいしかった「イシガキダイ」も釣れるとあり、迷わず5号です。
「餌は何つけているの?(5号竿と8000番リールで昼間から何を釣る気なんだ…)」
「スーパーで半額だった小アジです!この海、ウツボが多いですねえ。」
「…そうねえ、仕掛けはなにかな?(死にアジつけりゃ、そりゃウツボが食うだろよ!)」
注釈/(カッコ)内は、今なら想像できる「心の声(たぶん)」です
「ボウズのがれです!」
「(ボウズのがれってなんだろうな)ちょっと見せて。うん、胴突仕掛けね。(磯竿5号で桟橋から胴突か~)…えーと、胴突だとね、こっちの竿がいいかな(注:わくわくタックルセット)。餌は他にあるかな?イカがある、イカがいいかもね。」
そういうと、仕掛けにイカをつけながら、「ぴらぴらさせるといいよ。魚にアピールできるから」と、やり方を見せてくれました。続いて、わくわくタックルセットを手にし、そっと岸壁の縁に仕掛けをまっすぐ落とし「こうやって、底におもりがついたら、2,3回巻いてね、とんとんと海底につける感じで上下させながら、待ってみて。あたりがなければ、少し歩いてね。海底に置きっぱなしにすると、根掛かるからね」
「なるほど!ずっと、ほったらかしにしてました!」
「(知ってるよ)はい、頑張ってね~。」
アドバイスのおかげで、その後、根掛かりが激減し、時間効率も良くなり、それなりに釣ることができました。感謝、感謝です。

ウキフカセ特訓ポッキリ6時間
さて、この親切な釣り師三人組は、偶然にも同宿でした。私は煮付けた魚を、夕餉を囲む皆さんに、お裾分けしました。それをきっかけにお話すると、この方々はひだぶん最古の常連で、真夏以外、毎月必ず式根に通い続けているウキフカセ釣りの猛者軍団でした。
私は、自分が川育ちで川で釣りをして遊んでいたこと、80歳のオバチャンを連れて一緒に釣りをしたことを話すと、一番背の高いいぶし銀の方が「私が何歳かわかりますか」と言います。素直に「70代前半くらいですか?」と答えると、「82歳ですよ。」
…うーむ。登山界も、アスリートみたいな化け物シニア登山者がいますが、昨日の磯といい、釣り界隈もたいがいだ。
そして。
「よし、わかった。明日2時に起きれるか?フカセ釣りを教えてあげよう。」
「マジですか!」
こんな機会はまずありません。私は即答して、フカセ釣りに連れてってもらうことにしました。とりあえず、さっさと寝て、夜中の2時に無事に起き、ヘッドライトつけて、フカセ釣り猛特訓に出発です。
…ところでフカセ釣りってなんでしょうね。
さすがに名前くらいは知っていますが、玄人向けのイメージで、詳しいことはよくわかりません。
釣り場に到着すると、「この竿でやって」と1本の竿を渡されました。5.3mの磯竿2号です。私の強欲5号竿に比べると軽いし、細いし、仕掛けは超長いし、初めて尽くしです。こんな竿で大きい魚が掛かったらどうするんだろう。
しかも、誘ってくれた方は、自分の釣りを一切しません。私の後ろに立って、「大きいオキアミを選んで」「あの辺に投げてみな」「いつも同じ場所に投げて魚を集めて」「手返しをよくしよう」「コマセをどんどんまきなさい」「もっと柄杓をバッカンに押し付けるとコマセの飛距離が出る」「竿先は下げて」「潮が変わった」などなど、熱血指導くださいます。ありがたいのですが、この方は、せっかく式根島まで来たのに、これで良いのでしょうか。
その隣で82歳の最長老は、背筋が伸びた侍のような立ち姿で、しゅんしゅんと竿をしならせています。カッチョイー!!最初に、私に釣りを教えてくれた、もう一人の方も、魚に調子を合わせながら細い竿で軽やかに釣り上げています。
最初は投げた仕掛けの回収もろくにできず、両隣の邪魔ばかりしていた私も、2時間、3時間、4時間と一切休まず、竿を振り続けていると、なんとか一連の動作ができるようになってきました。5時間を過ぎてすっかり朝になったころ、とうとうその時は来ました。
「あっ、ウキが沈んだ!食ってる。食ってるぞ。巻いて巻いて!」
確かにウキが見えません。何がかかったんだろう…。
「巻くのが遅い!もっと早く巻いて」
私はハッとして、夢中で巻き上げました。
「巻け巻け!」
「はい!」
「もっと早く!もっと!」
「はい!」
あせって、どんどん巻いていくと
「いけない!!巻きすぎ!!」
えっ
「嗚呼っ」←右隣
「あ~」←左隣
ポッキリ
「折れたーッ!!」←後ろ
…竿の先に、折れた穂先と赤いオジサン(注:魚)が哀しげにぶら下がっております。

一瞬何が起こったか全くわかりませんでしたが、そうか!竿って折れるのか!!
…これは大変なことになってしまいました。
すみません!!!
「…いや、アハハ、大丈夫大丈夫。」
「釣れたからね、よかったよかった」←菩薩の域
どう考えても、全然よくありません。

宿に戻ってすぐ、女将さんに事情を話し、「こういう場合は、どうやって弁償をしたらいいか」と相談しました。すると、「あら~、まあ、いいんじゃないのー」と、まともに聞いてくれません。「いつも来る方なら、前払いするので、お酒をつけてください。」と頼んでも、「気にし過ぎよー」とのん気です。それでも、しつこく頼むと、やっとのこと「わかりました。」と、引き受けてくれました。
本当は竿を弁償したらいいんだろうけど、絶対にいらないいらない、って言いそうだからなぁ…と溜息をついた直後、「もういいって言ってるのにー!!」と大声が聴こえてきて、先ほどの釣り指導の先生がずんずん近づいてきました。
「俺が誘ったんだから気にしなくていい!」
後ろで女将さんが「うっかりしゃべっちゃったわー」って舌を出してます。
ツカエナイ オカミデスネ
かくして、6時間のウキフカセ釣りの猛特訓は、「棚の調整」「ウキの観察」「アタリの察知」「合わせ」「コマセと仕掛けの同調」「潮読み」という釣りにおける重要なキーワードを使いこなす方々の手本を見る貴重な機会となり、少なくとも、その言葉の意味を知ることができました。また、この特訓をきっかけに、釣りの病が本格的に重症化したのは言うまでもありません。
その後、この釣り師三人組いや、お師匠達とは、何度も顔を合わせることになるのでした。物語は続く。
参考:ウキフカセ釣り
[意味]数ある釣法の中でも、一時たりともウキや流れていく撒き餌、潮の動きから目を離さず、思考を続ける恐ろしく集中力がいる釣りのこと
思い出ギャラリー



今回釣った魚
ウツボ、トラウツボ、イシガキフグ、キタマクラ、ソウシハギ、アカマツカサ、オオスジイシモチ、メイチダイ、アカヒメジ ホウライヒメジ アカハタ イシガキダイ オジサン
↑黄色は食べやすく美味しい魚(当社比)
今回のお料理(3泊分)





・メイチダイと式根鯛平君の刺身
・メイチダイの紫蘇カルパッチョ
・小松菜と人参の和え物
・きのこと茄子のトマトペンネ
・式根鯛平君のかぶと煮
・式根鯛平君の鯛茶漬け
調理のポイント
[持参したもの]
・パックのネギみじん切り ・みょうが ・生姜 ・すりごま ・粉末和風だし ・スプレータイプのオリーブオイル ・茄子 ・トマト水煮パック ・エリンギ ・小松菜と人参を茹でたもの ・パスタ ・岩塩 ・レモン ・すだち ・紫蘇 ・人参・ネギ・大根(それぞれカットして)
[現地調達]
調味料、パックごはん、式根島名産のたたき、式根鯛平君(養殖真鯛)
[工夫とポイント]
・野菜をカットしたり、茹でて、ジップ付き袋で持参すると時短になる
・薬味パックがあれば、なめろうや茶漬けに便利
・すりごまや片栗粉はジップ付き小袋に入れて持参
・式根鯛平君を初日に頼んでおくと、おおらかな気持ちで釣りができる
※この時初めて式根鯛平君をオーダーし、その後かなりの頻度で頼んでいます
よりぬきレシピ
書いた人

こんにちは。私は、「自分で釣った魚で料理を作って、美味しいお酒を飲むため」に式根島に通っています。この「今宵もしきねでバエパッチョ」が式根で釣りをやってみるきっかけになったり、自炊民の多少の参考になれば幸いです。