防御のための香りなのに…

古くから人間に利用されるクスノキの仲間


クスノキ科植物の多くは葉や樹皮に香りがあって、古くから人間に利用されてきました。ヤブニッケイと近縁のセイロンニッケイはお菓子に使うシナモンの原料ですし、クスノキからは衣類の虫除けに使う樟脳が取れます。ほかにもゲッケイジュ(ローレルとして料理の香り付け)やクロモジ(お茶席の和菓子にそえる楊枝)もこの科のメンバーです。

香りのある葉をもつ植物は、その芳香物質で昆虫に食べられないよう防御していると考えられています。実際クスノキ科の植物には虫食い痕があまりありません。しかし、その芳香物質をものともせず、アオスジアゲハという美しい蝶の幼虫はこれらの植物を食べて育ちます。大変かわいらしい青虫ですが、昆虫としてはゲテモノ喰いといえるでしょう。けれども、私たち人間もこの香り物質を利用するという点では、アオスジアゲハと同じくらいには、クスノキ科植物にとって「信じられないゲテモノ喰い」なのかもしれませんね。

和名ヤブニッケイ
学名Cinnamomum yabunikkei H. Oba
分類クスノキ科 Lauraceae
大きさ高さ20 mに達するが、式根島では10 m以下のことが多い。葉は長さ6 cm~12 cm、幅2 cm~5 cm、葉柄は8 mm~18 mm
好む場所暖地の常緑広葉樹林
式根島で見られる場所道沿いや家の周辺
分布関東・北陸以西、四国、九州、琉球。韓国南部島嶼、台湾にも

参考文献

一般社団法人日本植物生理学会(2015)みんなのひろば 植物Q&A 植物の香り成分と蝶の食草。
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3268 (2025年1月29日閲覧)
日本蝶類保全協会編(2019)『フィールドガイド 日本の蝶 増補改訂版』(誠文堂新光社)pp.72-73.
太田和夫(2019) 「ヤブニッケイ」in『山渓ハンディ図鑑 樹に咲く花 離弁花①』第4版(山と渓谷社)p.398.
米倉浩司(2015) 「ヤブニッケイ」in『改訂新版 日本の野生植物 1』(平凡社)p.80.
米倉浩司・梶田忠 (2003-) BG Plants 和名-学名インデックス(YList),http://ylist.info(2025年1月29日閲覧)