
ハチジョウイチゴ
落葉低木。葉は互生、3〜5裂であまり深くは裂けない。葉の表面には光沢はなく、縁に不ぞろいな鋸歯がある。葉の裏の葉脈、葉柄、花柄、若い枝に白い絹のような毛がある。3月〜4月、直径3〜4 cmの白い花が下向きに咲く。6月にオレンジ色のキイチゴが実る
そっくりさんのキイチゴ2種
来るお客(虫)は違うかも?
ハチジョウイチゴは掌状の葉・白い花・オレンジ色の実で、カジイチゴととても似ています。けれども式根島の南側の道沿いでは、ハチジョウイチゴの方が多いようです。決め手となる違いは、葉柄や花柄、葉の裏の葉脈の白い毛です。またハチジョウイチゴはカジイチゴよりも葉は小さめで優しい雰囲気、そして花は下を向いています(カジイチゴの花は上を向く)。
花の向きが違うということは、ハチジョウイチゴとカジイチゴでは花粉を運ぶ昆虫の種類が異なっているのかもしれません。一般的に下向きの花には、逆さまにぶら下がる脚力のあるハナバチ類が訪れます。下向きの花は主にハナバチ類を「お客」として呼び、効率よく花粉を運んでもらっていると考えられています。一方で上向きの花は誰でもウェルカム。ぶら下がれない甲虫やハエの仲間も来るかもしれません。
さてこの2種類のキイチゴの花には実際にどんな虫が来るのでしょうか。こればかりは現場で観察しなければ分かりません。皆さんもぜひ観察してみてください。
DATA
和名 | ハチジョウイチゴ(ビロードカジイチゴ) |
学名 | Rubus ribisoideus Matsum. |
分類 | バラ科 Rosaceae |
大きさ | 高さ1〜1.5 m。葉は長さ5〜7 cm |
好む場所 | 海岸近くの林縁 |
式根島で見られる場所 | 道沿いや空き地 |
分布 | 伊豆諸島、渥美半島、紀伊半島、山口県、四国、九州、朝鮮半島南部 |
参考文献
池田博(2015) 「ハチジョウイチゴ」in『改訂新版 日本の野生植物 1』平凡社 pp.49-50.
石井英美(2019) 「ハチジョウイチゴ」in『山渓ハンディ図鑑 樹に咲く花 離弁花①』第4版(山と渓谷社)pp.582-583.
石井博(2020)『花と昆虫のしたたかで素敵な関係 受粉にまつわる生態学』ベレ出版
米倉浩司・梶田忠 (2003-) BG Plants 和名-学名インデックス(YList),http://ylist.info(2025年4月6日閲覧)