紅葉することもある。神引展望台にて。

冬の磯を彩る金色の花

染色体数日本一の野菊


冬の磯に行けばどこにでも咲いている、ありふれた海岸植物。イソギクのことは、ベントス調査の背景として、そんな風にぼんやりと意識していただけでした。

けれどもしばらくぶりに再開したイソギクは、香り高く、小さな太陽のように輝き、見ただけで気分が晴れやかになる花でした。

イソギクは日本固有種で、種小名のpacificumが示す通り、主に太平洋沿岸に生育します。しかしその分布域はそれほど広くなく、千葉県の犬吠埼から愛知県の渥美半島、伊豆諸島(鳥島まで)まで。日本海側にも山口県から京都府まで分布域がありますが、太平洋側の分布域とかなり隔たっているのはなぜなのか、不思議です。

イソギクは日本の野菊の中で染色体がいちばん多く、90本もあります。 四国にはイソギクのそっくりさん、同属のシオギクがあり染色体は72本。紀伊半島にはシオギクとイソギクの交雑種と思われるキノクニシオギクが分布しているとのことです。イソギクの兄弟分のこの2種にもいつか会ってみたいものです。

和名イソギク
学名Chrysanthemum pacificum Nakai
分類キク科 Asteraceae
大きさ高さ30 cm程度。葉は長さ4 cm~8 cm、頭状花は径約5 mm
好む場所海岸の岩の上や崖
式根島で見られる場所すべての海岸。道沿いの明るいところ。神引展望台にも。
分布千葉県犬吠崎から静岡県御前崎、伊豆諸島

参考文献


永海秋三(1953) イソギクChrysanthemum pacificum NAKAI(2n=90)の分布の生態遺伝学的研究。横浜国立大学理科紀要、第二類、 生物学・地学(2)pp. 50-58.

米倉浩司・梶田忠 (2003-) BG Plants 和名-学名インデックス(YList),http://ylist.info(2025年2月10日閲覧)