今宵もしきねでバエパッチョ自分で釣って、さばいて、飲む!

イサキとメアジでケンカをやめて

前回コロナで一家全滅した弟家族と私で、式根島釣行リベンジが決まったのは10月のこと。子供の頃から釣り好きだった弟ですが、「海釣り」は初めてとあって気合が入っています。どれくらい気合が入っているかというと、シーバスロッドとリールを新調し、高校生の息子をバス釣りに連れていき、フッキングの猛特訓をするほどです。私は私で、釣行3回目を前に「わくわくタックルセット」に加え、弟のアドバイスを聞いて新しい竿とリールを買ってしまいました。さらに、「何事も100回やればできるようになる」という強い信念のもとに、連日狂ったように魚をおろし続けました。最初は死んだ魚に申し訳ない仕上がりでしたが、なんとか、マニュアルを見ずに刺身が造れるようになりました。

家族に「魚以外のものを食べたい」と言われました

満を持して、11月の連休を迎えました。
さるびあ丸から見る夜景に大はしゃぎする弟一家を見て、誘ってよかったと心から思いました。一点、心配だったのは「泳ぎたい」というリクエストです。確かに、美しい泊海水浴場の写真を見たら、常夏に見えるでしょうが、式根島は熱帯じゃないんですから、11月は普通に秋です。それに、私は、一分一秒を惜しんで釣りに専念したいのです。「どうせ現地に着いたら、そんな気はなくなるだろう」とタカをくくっていたところ、到着したら、まさかのバカ陽気です。Tシャツ上等、普通に泳げてしまいます。

約一名さほど楽しくもないわけですが、初めてシュノーケルをする連中を放置するわけにもいきません。ただ、ビーチに置いてあった数ある荷物の中から、弟のカツ丼を選んでさらっていったカラスはグッジョブでした。

本当に泳いでたのは我々だけ

そしていよいよ釣りです。この日のために、キッチン付きの自炊宿をとり、米と調味料と副菜だけ持参し、メインディッシュは釣果を当て込む背水の陣で臨みます。秋の日は短く、すでに傾き始めています。時間はなくても、ここは釣り師の憧れ式根島。夕まづめに4人で5本も竿を出せば、クーラーボックスからあふれんばかりの釣果が見込めるはずです。

ところが、釣りを始めて15分後。想定外のことが起きました。

「飽きた。」

なんと高校生の甥と大学生の姪が、竿を置いてしまったのです。そして、車に戻ってスマホをいじっています。さらに、当てにしていた弟が、どうも大スランプです。これまでダツしか、かけていません。

しかも、目を釣っている

時間は無情に過ぎていきます。

私「ちょっと食べられる魚を釣ってよ」
弟「細かいアタリに反応してもしょうがないんだよ。オレは大物を釣りたいの!4人だよ?小さい魚ばかり釣ったってしょうがないじゃんよ!」


[参考]それまで私が釣っていた魚↓


…確かに最大25cmと大きくはないですが、ラインナップはまあまあだし、何もないより、はるかにマシです。通常なら逃がすミノカサゴまで、その場で毒針をフルカットしてクーラーボックスに入れているのに、ひどい言い草です。

弟は、「あのね!アタリにいちいち合わせてフッキングしてたら、いくらでも釣れちゃうんだよ。こうやってさ!」と語気を強めながら竿を素早く上げました。

こんなん笑うがな。

私「ほんとだ。鬼フッキングしてる。」
弟「……。」

私の方にも強いアタリがありました。これは大物間違いありません。弟が張り切ってタモ入れをしてくれました。仲睦まじい二人の共同作業です。

でっけー

弟「…これ食べられなかったっけ」
私「ちょっと捌く練習してないね…」

次第に、秋の短い日が暮れて、完全に夜釣りモードになってしまいました。じれた甥と姪が車の中から「もう帰ろうよ、お腹空いたよ」と騒ぎます。しかし、この釣果ではとても帰れません。なにせ、私以外、1匹も食べられる魚を釣っていないのです。今思えば、死ぬほど笑い転げた弟のシラコダイも逃がすべきではありませんでした。時間は19時を回り、すでに商店も閉まってしまいました。

弟「この島コンビニとかないの?」
私「あるわけないでしょ」

弟「えー、じゃあ、ここの人どうやって暮らしてるの?」
私「日本中コンビニがあるわけじゃないんですよ。それより、早く釣ってよ。」

甥姪「えー、ご飯ないの?お腹空いた!早く帰ろう!」※高校生大学生
私「歩いて先に帰っていいよ」

甥姪「暗い!道分からない!そんなことできない!」※高校生大学生
弟「こんな小さい魚じゃ、いくらあっても腹の足しにならないよ」
私「じゃあ、さっさと1本でも多く竿だして釣りなさいよ!」

そのときです。先端で静かに釣りをしていた二人の釣り師が、立て続けに何かを釣っています。私は、竿を置いて、何が釣れているのか聞きに行きました。すると、「今ちょうど、メアジやイサキが回ってきてますよ!頑張れば釣れますよ!みんなで頑張って!」と熱く励ましてくれました。

「みんなで頑張って!」

…まるでこちらの会話が聞こえていたかのようです。静かな島の桟橋ですから無理もありません。

私は気を取り直して、胴突仕掛けを落とすと、すぐアカマツカサがかかりました。

いわゆる夜の金魚

アカマツカサは、小さくても味が濃く、脂がのっているので、今思えば、数を集めて煮つけにできたのですが、「こんな金魚みたいのじゃ・・」と逃がしてしまいました。ただ、確かに、釣り師の方が言うように、さっきよりはるかにアタリがでてきました。いかにもイサキが釣れそうです。

私はヤキモキして「はやく釣りしてよ!!」と弟に怒鳴ると、「大きいのが釣れるっていうから島に来たのに!」と的外れなセリフが返ってきます。ぐずぐずしていると、地合いが終わってしまいます。「いいからさっさと竿を出しなさい!」と、私もとうとう命令口調になって言い争いをしていると、先ほどの釣り師の一人が近づいてきました。

「あのー」

見ると、その両手に1匹ずつ魚がぶら下がっています。

「これ、イサキとメアジ。あげるからケンカしないで。」

どことなく笑いをこらえているように感じましたが、ありがたく頂戴し、納竿して宿に戻って無事に夕餉にすることができました。

あの時の二人組の釣り師の方、改めてお礼を言わせていただきます。どうもありがとうございました。

そんなにでかいのがいいなら
60㎝近いコイツを食わせればよかった
式根の海に罪はない(これは翌朝)
弟のダツ(しかも目にスレがかり)
弟のシラコダイ
アカハタ
アカヒメジ
ブダイ(メス)
トラウツボ
アカハタ
ミノカサゴ

↑黄色は食べやすく美味しい魚(当社比)

調理のポイント

レシピ

バエパッチョ(バエるカルパッチョ)

  1. 白身魚を薄切りにしておく
  2. 皿に塩をぱらぱらとまき、その上に薄切りの魚を並べて、オリーブオイルをスプレーする
  3. スライサーで無農薬のレモン1/2を皮ごとスライスして2にのせる
  4. 紫かいわれやハーブ、ピンクペッパーをのせる
  5. 上から塩をさらにまき、残りのレモンを絞ってかける。最後にさらにオリーブオイルをスプレーして出来上がり。ワインがはかどります。
バエパッチョ提唱者

こんにちは。私は、「自分で釣った魚で料理を作って、美味しいお酒を飲むため」に式根島に通っています。この「今宵もしきねでバエパッチョ」が式根で釣りをやってみるきっかけになったり、自炊民の多少の参考になれば幸いです。