陶器のような白いはさみ
左のはさみが大きい
はさみで蓋をする
本物のアマオブネ

すべすべのヤドカリ、北上中


声に出して言ってみたくなる和名のヤドカリです。
スベスベマンジュウガニ、スベスベオウギガニ、スベスベエビ、スベスベオトヒメエビなどのように、「スベスベなんとか」という和名の甲殻類は珍しくありません。棘や顆粒、剛毛でざらざらして見えることが多い甲殻類がつるんとしていると、つい「スベスベ」とつけたくなるのかもしれません。
スベスベサンゴヤドカリは歩脚に棘や毛がほとんどありませんが、とりわけはさみ脚はつるんと白く、陶器のような質感です。
貝殻の中に引っ込んでいるときは、このはさみ脚で蓋をします。写真の個体はアマオブネという巻貝に入っていました。生きているアマオブネには白い蓋があり、その蓋とスベスベサンゴヤドカリのはさみ脚がとても似ていて、私も一瞬「生きているアマオブネ?」と見間違えそうになりました。
三宅(1982)によれば本種は「小笠原諸島・南紀・屋久島〜八重山群島;インド西太平洋・ハワイ諸島沿岸」に分布するとのことですが、加藤・奥野(2001)では「房総半島以南」の記述があり、八丈島の個体の写真が掲載されていました。多くの南方系の生物同様、スベスベサンゴヤドカリも地球温暖化により北上しつつあるようです。

和名スベスベサンゴヤドカリ
学名Calcinus laevimanus (Randall, 1840)
分類節足動物門 Arthropoda 甲殻亜門 Crustacea 軟甲綱 Malacostraca 十脚目 Decapoda ヤドカリ科 Diogenidae
大きさ体長2 cmほどになる
好む場所岩礁・サンゴ礁の潮間帯〜水深10 m
式根島で見られる場所釜下海岸ほか潮間帯の転石下の隙間、潮下帯にも?
分布房総半島以南の南日本、インド・西太平洋・ハワイ

参考文献

加藤昌一、奥野淳兒(2001)『エビ・カニ ガイドブック 伊豆諸島・八丈島の海から』TBSブリタニカ

三宅貞祥(1982)『原色日本大型甲殻類図鑑 I』保育社

でんか『ヤドカリの国』「スベスベサンゴヤドカリ」
https://k-hermit.com/laevimanus/ (←素晴らしい写真です! 2025年9月13日閲覧)

DecaNet eds. (2025). DecaNet. Calcinus laevimanus (Randall, 1840). Accessed through: World Register of Marine Species at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=208669 on 2025-09-05

いいじま あきこ

こんにちは。神田外語大学で環境科学と生物学を教えている飯島明子です。学生のころ巻貝の調査で通った式根島に、また訪れるようになりました。島での私のあだ名は「シッタカの姉ちゃん」(磯にすむ小さな巻貝を島ではシッタカと呼びます)。式根島の生き物を紹介しています