
ハマエンドウ
春から夏にかけてエンドウマメそっくりの赤紫色の花をつける海岸植物。粉白色をおびた羽状複葉の先端がくるりと巻きひげになっている。房総半島では4月から咲くが、式根島では3月から花が見られる
ハマエンドウの長い旅
式根のハマエンドウはどこから来て、どこへ行く?
ハマエンドウは北半球の海岸に広く分布します。これだけ分布を広げられる秘密は、その種にあります。
エンドウマメそっくりな鞘に入っている丸い種はじょうぶで軽く、海水に浮いて分散し、流れ着いたところで発芽するのです。日本列島の南岸を西に流れる黒潮は、速いところで秒速2 m以上ですから、その流れに種が乗った場合は1日で170 kmも進むことになります。台湾から式根島まで(約2,000 km)も12日しかかかりません。
ハマエンドウの種は、少なくとも2ヶ月は問題なく海水に浮き続ける能力があると分かっています。
つまり台湾・琉球列島・九州南岸・四国・紀伊半島などのハマエンドウの種は、式根島まで流れ着くことがまったく可能だ、ということです。そして式根島のハマエンドウの種は、房総半島から銚子まで、黒潮の流路によってはもっと北まで旅をするでしょうし、さらに西へ西へと進んでアメリカ西海岸に到達しているかもしれません。
長旅の果てにたくましく咲く美しい花を、式根島の海岸でぜひ見てみてください。
DATA
和名 | ハマエンドウ |
学名 | Lathyrus japonicus Willd. |
分類 | マメ科 Fabaceae |
大きさ | 地面を長く這う茎から斜めに、高さ15 cmほどに立ち上がる。花は長さ2〜2.5 cm。 |
好む場所 | 砂浜、礫浜 |
式根島で見られる場所 | 石白川海岸など |
分布 | 北半球の亜寒帯から温帯にかけて、太平洋岸と大西洋岸に広く自生する。東アジアでは亜熱帯域(琉球列島、中国南部)まで分布する。南米チリに外来種として侵入している |
参考文献
気象庁 北太平洋亜熱帯循環と代表的な海流および水塊
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/obs/knowledge/kuroshio_watermass.html(2024年12月20日閲覧)
大場広好(2016) 「ハマエンドウ」in『改訂新版 日本の野生植物 2』(平凡社)pp.275-276
Royal Botanic Gardens, Kew. Plants of the World Online. Lathyrus japonicus Willd.https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30381438-2(2024年12月20日閲覧)
澤田佳宏、津田 智(2005) 日本の暖温帯に生育する海浜植物14種の海流散布の可能性。植生学会誌22:53-61.
米倉浩司・梶田忠 (2003-) BG Plants 和名-学名インデックス(YList),http://ylist.info(2024年12月20日閲覧)